ENGLISH
2024.07.29
虫歯治療

乳歯の虫歯は治療が必要? 放置するリスクや乳歯の虫歯の予防・治療法を解説

乳歯は永久歯に比べて虫歯になるリスクが高いといわれています。「どうせ抜けるのだから」と放置していると、子どもの口腔内の健康や食生活などに悪影響を及ぼす可能性があるので、速やかに適切な治療を受けることが大切です。

本記事では、乳歯の虫歯の特徴や、虫歯ができやすい場所、乳歯の虫歯を放置するリスク、乳歯が虫歯になる主な原因、乳歯の虫歯の予防法と治療法について解説します。乳歯の虫歯の治療について悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

乳歯の虫歯の特徴

永久歯と比較した乳歯の虫歯の特徴

乳歯の虫歯と永久歯の虫歯にはいくつかの違いがあります。乳歯の虫歯を永久歯のものと同じように認識していると、虫歯の発見が遅れたり、悪化するスピードが速くなったりする原因になるので注意しましょう。

ここでは乳歯の虫歯ならではの特徴を4つご紹介します。

進行が早い

乳歯は永久歯に比べて虫歯の進行が速く、短期間で悪化しやすい傾向にあります。それは乳歯のエナメル質や象牙質が、永久歯のものより薄いためです。

エナメル質とは歯の白くてつやのある部分で、歯の内部を保護する鎧のような役割を担っています。一方の象牙質は、エナメル質の下層にある黄色っぽい部分のことで、歯の主成分ともいえる組織です。柔らかい構造をしており、硬いエナメル質を下から支えることで、歯が割れにくい仕組みになっています。

乳歯はこれらの層が永久歯よりも薄いため、外部からの影響を受けやすく、短期間で虫歯菌の侵食が神経にまで達してしまうこともあります。

また食事の変化によって虫歯が進行しやすいのも、乳歯ならではの特徴です。子どもの食事は母乳やミルクからスタートし、離乳食、普通食へと切り替わっていきますが、その過程で食べるものの種類や量も増えていきます。固形食になると歯に食べかすが詰まりやすくなる他、おやつなどを食べる機会が増えると、虫歯菌が好む糖分の摂取が多くなり、必然的に虫歯が発生するリスクが高くなります。

このように短期間での食生活の変化が、虫歯の進行スピードを加速させる要因になることもあるので、注意が必要です。

磨き残しによる発生リスクが高い

乳歯は永久歯に比べてかみ合わせ部分の溝が深く、歯ブラシの毛先が届きにくい構造をしています。そのぶん磨き残しが発生しがちで、虫歯菌が繁殖しやすい環境とされています。

虫歯の色が白い

虫歯というと歯が黒くなるというイメージがありますが、乳歯の虫歯は黒くならず、ほとんどが白いまま進行します。

そもそも虫歯が黒くなるのは、虫歯菌が栄養素を取り込んだ際に発生する硫化水素が鉄分と反応して酸化鉄になり、それが歯の成分の一つであるコラーゲンに付着し、色素沈着を起こすのが原因です。乳歯の場合は、永久歯よりも進行のスピードが速く、色素沈着を起こす前に悪化するため、見た目が白いまま虫歯が進行するケースが多くなっています。

虫歯=黒いという固定観念を持っていると、知らない間に子どもの虫歯が進行している可能性があるので要注意です。

痛みが出にくい

永久歯の場合、虫歯菌が象牙質に到達し、そこへ水や食べ物が侵入することによる刺激で痛みを感じるケースがほとんどです。

一方で子どもは大人に比べて痛覚が発達していないので、虫歯菌が象牙質に到達しても、大人ほど強い痛みを感じることがありません。痛みを感じ始める原因も、象牙質への刺激ではなく、虫歯菌によって空いた穴に食べかすなどが詰まり、歯茎が炎症を起こすことによって生じるケースが大半です。

痛みによる訴えが遅れるぶん、虫歯の早期発見が難しく、気付いたときにはかなり悪化していたというパターンもあるでしょう。

乳歯の虫歯ができやすい場所

虫歯はどの歯にもできるリスクがありますが、乳歯の虫歯は特に以下3つの場所に発生しやすい傾向にあります。

前歯

乳歯が生えてくるのは一般的に下の前歯、上の前歯の順です。特に乳歯の前歯のみが生えている状態では、前歯に食べかすが集中するため、前歯の表面を中心に虫歯菌が発生しやすい傾向にあります。

前歯の裏側も、甘い飲み物を飲むときなどに触れやすい部分なので、表だけでなく裏側もよくケアしないと、虫歯の原因となります。

奥歯

奥歯は元々歯ブラシが届きにくい場所ですが、乳歯の場合はさらに、かみ合わせ部分の溝が深くて毛先が入りにくいという悪条件が重なるため、他の部分より虫歯のリスクが高くなります。

また奥歯は鏡を使っても死角が発生しやすく、大人が仕上げ磨きをしても、磨き残しが出るケースが少なくありません。特に奥歯と奥歯の間や、溝の奥などは磨き残しが発生しやすく、虫歯のリスクも高いといわれています。

歯と歯茎の境目

歯と歯茎の境目には歯周ポケットと呼ばれる溝があり、食べかすが詰まりやすくなっています。溝に詰まった食べかすや歯垢を取り除くには、歯ブラシに角度を付けて磨かなければなりません。しかし子どもは歯に対して平行にブラシを当ててしまいがちで、歯周ポケットの清掃が不十分になるケースが見られます。

歯と歯茎の境目に虫歯ができた場合、歯茎に隠れて異常に気付かないことも多いため、発見が遅れて虫歯が進行しがちです。特に奥歯に歯茎がかぶさっている歯肉弁がある場合、歯と歯茎の境目の溝がより深くなり、汚れがたまりやすくなることから、虫歯の発生リスクも高くなります。

乳歯の虫歯を放置するリスク

乳歯はやがて永久歯に生え替わるため、「わざわざ治療する必要はないのではないか?」と考える方も少なくありません。しかし乳歯の虫歯を放置すると、子どもの今後の健康にさまざまな悪影響を及ぼす原因となる恐れがあるので、虫歯を見つけたら速やかに治療することが大切です。

ここでは乳歯の虫歯を放置することによって生じるリスクを5つご紹介します。

虫歯が広がる可能性がある

乳歯の虫歯を放置していると、虫歯菌が他の健康な歯にまで侵食し始めます。虫歯菌は放置している虫歯が多ければ多いほど増殖するため、適切な処置を施さないと悪循環を引き起こしてしまうでしょう。

場合によっては乳歯だけでなく、生え替わった後の永久歯まで虫歯になってしまう恐れがあります。

顎の発育が悪くなる

虫歯による痛みや違和感があると、子どもは無意識にその歯で物を噛むことを避けるようになります。すると、口の片側だけで食事をする癖が付いてしまい、顎の発育が悪くなる、左右で顎の形が異なる、噛む力が弱くなるといったトラブルを引き起こしかねません。

また顎が小さいと鼻腔が狭くなって鼻呼吸に支障が生まれ、口呼吸の癖が付きやすくなったり、舌の動きが鈍くなって滑舌が悪くなったりするなど、二次的な影響が出ることもあります。さらに顎が小さ過ぎて永久歯の並ぶスペースを十分に確保できなくなった場合、抜歯を伴う矯正治療が必要になるケースもあります。

歯並びが悪くなる

乳歯は一般的に生後6カ月頃から生え始め、3歳くらいまでに全て生えそろった後、6歳~12歳くらいにかけて永久歯に生え替わっていきます。しかし虫歯によって早期に乳歯が失われると、その両側にある歯が支えを失って傾きがちです。その結果、永久歯が生えてくる場所を塞いでしまった場合、前後にずれて生えてくるなど、歯並びが乱れる原因となります。

歯並びが乱れると見た目が悪くなるだけでなく、歯と歯が重なり合う部分に虫歯ができやすくなる、顎関節や周辺の筋肉に余計な負担がかかって顎関節症になる、歯と歯の間に隙間ができて発音が悪くなる、などの問題が生じることがあります。

また顎関節症は慢性的な肩こりや頭痛といった体の不調につながる場合が多く、日常生活に支障をきたす要因にもなるので注意が必要です。

永久歯の発育が悪くなる

永久歯は乳歯の根の先で作られているため、乳歯の虫歯が悪化し、根の先から顎の骨まで炎症が広がった場合は、虫歯菌の汗腺が永久歯の歯胚にまでおよびます。歯胚とは歯の芽にあたる組織なので、虫歯菌に感染すると、永久歯の発育が悪化しかねません。特にエナメル質が形成不全を起こした場合、永久歯に白い斑点模様ができたり、茶色い永久歯が生えてきたりすることもあります。

前述の通り、エナメル質は歯の内部を保護する鎧のような役割を担っている組織なので、エナメル質形成不全を起こすと、虫歯になりやすい弱い歯が作られてしまうリスクが高くなります。

また虫歯によって乳歯の根に膿がたまると、永久歯の歯胚の位置が本来の位置とずれてしまい、歯が真っすぐ生えてこなくなる可能性も否めません。

偏食気味になる

虫歯があると、物を噛んだときに痛みや違和感を覚えるため、自然と硬い食べ物を避けるようになります。その結果歯ごたえのあるものは避け、柔らかいものばかり食べるなど、食生活が偏ってしまう可能性があります。

乳歯が虫歯になる主な原因

乳歯が虫歯になる原因は一つではなく、家族や生活習慣、食生活など複数にわたります。人によってはいくつもの原因が重なって虫歯になっていることもあるので、虫歯になりやすい状況に陥っていないかどうかチェックしてみましょう。

ここでは乳歯が虫歯になる主な原因を6つご紹介します。

磨き残しがある

乳歯が虫歯になる原因の多くは磨き残しです。子どもに発生する虫歯の8割以上が歯ブラシの届かない臼歯の溝から発生しているという報告もあります(※)。

磨き残しが発生する主な要因には、以下のようなものがあります。

  •  大きさの異なる乳歯と永久歯が混在していて段差ができやすく、歯が磨きにくい
  •  適切な歯磨きの方法を知らない
  •  歯ブラシが合っていない
  •  大人が仕上げ磨きをしていない
  •  子どもが歯磨きを嫌がって短時間で済ませてしまう

以上のようなケースに当てはまる場合は、磨き残しによる虫歯のリスクが高いです。磨き方や歯ブラシの選び方、仕上げ磨きの方法などを改善する必要があります。

それぞれの対処法について、詳しくは後述します。

※参考:厚生労働省.「子供のむし歯の特徴と有病状況」.(参照2024-06-14).

だらだら食べの習慣がある

だらだら食べとは、朝昼晩の三食の食事以外に、間食や夜食などを不規則に摂取することです。

口腔内は本来中性ですが、食事を摂ると虫歯菌が糖分をエサにして歯を溶かす酸を生み出すため、一時的に口腔内が酸性に傾きます。唾液のはたらきにより、食後20~30分程度が経過すると元の中性に戻りますが、食事と食事の合間にだらだらとおやつや夜食などを食べてしまうと、いつまでたっても口腔内が酸性に傾いた状態になり、虫歯になるリスクが高くなってしまいます。

たとえ一日の糖分摂取量が同じでも、おやつの時間にまとめて摂取するより、だらだら食べをしている方が虫歯になる確率が高くなるので要注意です。

家族からの感染

虫歯菌の一つであるミュータンス菌は口腔内に元々存在する常在菌の一種ですが、生後間もない赤ちゃんの口内にはミュータンス菌は存在していません。そのため、通常ならミュータンス菌による虫歯は発生しませんが、大人が口を付けたものを赤ちゃんにあげたり、箸やスプーンを共有したりすると、大人から子どもへミュータンス菌が移ってしまいます。

大人から子への感染は特に離乳食が終わった後、1歳7カ月~2歳7カ月頃の間に起こりやすいといわれているので、家族からの感染を防ぐ措置や対策を講じましょう。なお、3歳以降は子どもの口内の細菌バランスが整い始めてミュータンス菌に感染しにくくなるため、その後の虫歯リスクも低減されるといわれています。

ほ乳瓶でジュースを飲ませている

ほ乳瓶は一度に大量の水分を飲み込めない赤ちゃんに合わせて、中身が少量ずつしか出てこない仕組みになっています。そのため、ほ乳瓶にジュースを入れて飲ませると、甘いジュースを長時間にわたって口内に含むことになり、だらだら食べと似たような状態になってしまいます。

特にほ乳瓶の吸い口が密着する上の前歯の裏側に虫歯が発生しやすくなるので、ほ乳瓶でジュースを飲ませるのは控えましょう。

卒乳の遅れ

卒乳時期と虫歯の関連性を調べた研究によると、卒乳の時期が遅くなるにつれて虫歯の発生が多くなることが確認されています(※)。

母乳あるいはミルクだけを与えているうちはさほど問題ありませんが、授乳の一方で糖分を含んだ菓子や飲み物を与えており、かつ就寝前や夜間に授乳を行うと、虫歯菌が増殖しやすい口腔環境になるといわれています。なぜなら、就寝中は唾液の分泌が減少し、口内が酸性に傾きやすくなるからです。

何らかの理由で卒乳が長引いている場合は、おやつの習慣を見直すなどの対策を行うことが大切です。

※参考:e-ヘルスネット.「卒乳時期とむし歯の関係」.(参照2024-5-31).

歯ブラシの使用の遅れ

前述の通り、赤ちゃんにはミュータンス菌が存在していないので、最初のうちは無理に歯ブラシを使ったケアを行う必要はありません。まだ奥歯が生えてきていない段階なら、就寝前にガーゼや綿棒で表面を拭いてきれいにするだけでOKです。

ただし奥歯が生えてきた、あるいは離乳食を開始したら、ガーゼや綿棒で拭くだけでは磨き残しが出やすくなるため、赤ちゃん用の歯ブラシを使った本格的な歯磨きが必要になります。「赤ちゃんが嫌がるから」などの理由で歯ブラシを使ったケアを怠ると、磨き残しによって虫歯菌が増殖し、乳歯に虫歯ができる原因となるので注意しましょう。

ペットボトル症候群

ペットボトル症候群とは、ジュースや糖分入りの炭酸飲料、スポーツドリンクなどを大量に摂取することで高血糖状態になることです(※)。

喉の渇きを感じたときにこれらの清涼飲料水を飲むと、一時的に血糖値が上がります。すると、血糖値の上昇によってまた喉が渇くため、再度清涼飲料水を飲みたくなります。この繰り返しによって、短時間に大量の清涼飲料水を摂取すると、常に糖分を摂取している状態になり、虫歯菌が増殖しやすい口腔環境になるのです。

ペットボトル症候群になると虫歯のリスクが高くなるだけでなく、強い喉の渇きや尿の増加、倦怠感、疲労感、イライラ、吐き気といった体調不良が現れ始め、場合によっては意識がもうろうとして、命に関わる状態になることもあるので要注意です。

※参考:厚生労働省.「嗜好飲料(アルコール飲料を除く)」.(参照2024-06-03).

乳歯の虫歯の予防法

乳歯が虫歯にならないように、日頃から実践できる予防方法を6つご紹介します。

歯磨き

乳歯の虫歯予防の基本は、毎日の歯磨きです。離乳食を開始するタイミング、あるいは奥歯が生えてきたら、子ども用の歯ブラシを使った歯磨きをスタートしましょう。子ども用歯ブラシは年齢を基準に選ぶのがポイントです。子ども用歯ブラシに0~2歳用、3~5歳用などと表示されているはずなので、子どもの年齢に応じた歯ブラシを購入しましょう。

子どもが小さいうちは、子どもを親の膝に寝かせ、上から子どもの口の中を覗き込むような姿勢で磨く寝かせ磨きを行うことが大切です。寝かせ磨きのポイントとしては、上の前歯を磨くときは上唇の裏の筋(小帯)に歯ブラシが当たらないよう、親の人さし指でガードしながら、上唇をめくって磨いていくことです。歯茎と歯の間は45度くらいの角度を付けて、歯と歯の間は歯ブラシを小刻みに動かしながら、それぞれ丁寧に磨いていきます。

前歯の裏側を磨くときは歯ブラシを縦に当て、下から上へ汚れを掻き出すイメージでブラシを動かしましょう。一方で奥歯を磨くときは、親の人さし指を口内に入れて頬を内側から軽く押し、少し頬をふくらませた状態で磨きます。乳歯の溝は歯ブラシの毛先が届きにくいので、毛先をしっかり奥歯に当てたまま、小刻みに動かして念入りに歯垢を取り除きましょう。

なお奥歯の裏側を磨くときも、歯ブラシを45度くらいに傾けると、隅々まで磨きやすくなります。子どもが1歳を過ぎてからは、子ども自身に歯ブラシを持たせて自分で磨かせる習慣を付けます。ただ最初のうちはうまく歯磨きができず、磨き残しが出てしまう場合があるので、親の仕上げ磨きは必須です。

歯ブラシは子どもに使わせるものと、親が仕上げ磨きに使うものと2本用意しましょう。

フッ素ケアを行う

フッ素とはミネラルの一種です。虫歯菌が生み出した酸によって、歯から溶け出したカルシウムやリンを補ってエナメル質の修復を促進(再石灰化)したり、エナメル質を酸に溶けにくい性質にしたり、虫歯菌のはたらきを弱めたりする作用を持ちます。フッ素の定期的な塗布は虫歯予防に効果的であり、厚生労働省でも子どもの頃からフッ素ケアの実施を推奨しています。

フッ素ケアの方法は大きく分けて2パターンあり、1つ目はフッ素入りの歯磨き剤を使うことです。歯磨き剤に配合されているフッ素濃度が高ければ高いほど虫歯予防効果も高くなるといわれており、1,000ppm以上の濃度では500ppm上がるごとに予防効果が6%上がるとされています(※)。フッ素入り歯磨き剤はドラッグストアなどで市販されている他、歯科医院でも販売されているので、なるべくフッ素濃度の高いものを購入して自宅での歯磨きに使用することをおすすめします。

2つ目は歯科医院でフッ素を塗布してもらう方法です。歯科医院では市販のフッ素入り歯磨き剤よりも高濃度のフッ素を使用しているため、より高い予防効果を期待できます。

なおある調査では、歯科医院でのフッ素塗布と、フッ素入り歯磨き剤を併用することで乳歯の虫歯が65%減少したという報告があるため、フッ素入り歯磨き剤で毎日ケアしつつ、3~6カ月に1回くらいの頻度で歯科医院のフッ素塗布を受けるのがおすすめです。

※参考:厚生労働省.「フッ化物配合歯磨剤」.(参照2024-06-14).

シーラント

シーラントとは、奥歯の溝を物理的に埋めるなどして、虫歯を予防する方法です。ある調査では、シーラントを4年以上続けることで約60%の虫歯予防効果があったことが確認されており、フッ素ケアとの併用によってさらにその効果は増加するといわれています(※)。

シーラントの方法は使用する材質によって複数に分かれており、具体的にはレジンと呼ばれるプラスチックで溝を埋める方法の他、セメント材で溝を埋める方法、シーラント材の中に含まれるフッ素のはたらきで再石灰化を促す方法などです。

乳歯の奥歯は永久歯に比べて溝が深く、食べかすが詰まりやすい傾向にあるので、シーラントは乳歯の虫歯予防に効果的とされています。

※参考:厚生労働省.「シーラント(予防法)」.(参照2024-06-03).

キシリトール

キシリトールとは、樫や白樺などに含まれる糖分から作られた糖アルコールの一種です(※)。キシリトールには唾液の分泌を促すはたらきがある他、フッ素と同じ再石灰化作用があるため、乳歯の虫歯予防に有効です。またキシリトールは糖質の一種である糖アルコールでありながら、酸を生み出さない性質を持っています。さらに歯垢の中の酸の中和を促進したり、虫歯菌であるミュータンス菌の代謝を阻害したりと複数の作用を発揮するため、虫歯予防に効果的です。

キシリトールを使った虫歯予防には、キシリトール配合のガムやタブレットを使用します。キシリトールの配合濃度は製品によって異なりますが、濃度が高いほど予防効果も高くなるので、なるべく50%以上の高濃度キシリトール配合のものを選ぶことが大切です(※1)。

なお、キシリトールによる虫歯予防効果を十分発揮させるには、ガムやタブレットを一日3回、最低でも3カ月以上継続する必要があります(※2)。また、キシリトールの虫歯予防効果を得られるのはガムまたはタブレットです。たとえキシリトールが配合されていても、チョコやケーキ、ジュースなど他のお菓子や清涼飲料水では効果が発揮されないので注意しましょう。

※1参考:厚生労働省.「キシリトール」.(参照2024-06-03).

※2参考:日本歯科医師会.「キシリトールの上手な使い方」.(参照2024-06-14).

食生活の見直し

先述の通りだらだら食べをしていたり、糖分が多く含まれている食べ物・飲み物を多量に摂取したりしていると、虫歯になるリスクが高くなります。だらだら食べの習慣がある場合は、おやつを食べるのは一日1回15時のみ、などのルールを設けて、メリハリのある食習慣を付けるようにしましょう。

また糖分が多く含まれた飲料や食べ物の摂取を、なるべく控えることも大切です。お菓子や甘いジュースはもちろんですが、料理に使われるみりんやソース類、ケチャップ、カレールーなどにも意外と多くの糖分が含まれています。

体に良いというイメージのあるスポーツ飲料や乳酸菌飲料にも糖分は多く入っているので、過剰な摂取は禁物です。嗜好品を摂ってはいけないというわけではありませんが、一日に摂取する量に注意し、かつだらだら食べはやめることを意識しましょう。

箸などを共有しない

子どもに虫歯菌をうつさないよう、家族間での箸やスプーンなどの共有は避けましょう。大人の食べかけを子どもに食べさせるのもNGです。

併せて、家族のお口の健康にも配慮することが大切です。家族の誰かに虫歯があると子どもに虫歯菌が移るリスクが高くなるので、家族全員でオーラルケアに取り組み、口内環境を整えましょう。

乳歯の虫歯の治療法

乳歯が虫歯になってしまった場合の治療法は、虫歯の進行度によって異なります。

ここでは虫歯の治療法を進行度ごとに説明します。

初期段階(C0)の虫歯の治療法

C0は虫歯になりかけている状態を指します。この段階では本格的な治療は行わず、フッ素を塗布しながら様子を見るケースがほとんどです。併せて家庭での食習慣の見直しを行ったり、適切な歯磨きを続けたりすれば、次第に元の健康な歯に戻っていきます。

軽度(C1)の虫歯の治療法

C1は歯の表面のエナメル質に虫歯が発生している状態です。症状としては軽度なので、虫歯になった部分のみを削り、レジンを詰めて治療します。治療は基本的に一回のみです。

ただ乳歯は永久歯よりも柔らかく、歯が削れやすいため、一度詰めてもレジンが外れてしまうことがあります。その場合は再び歯科医院でレジンを詰め直してもらいましょう。

象牙質まで到達している虫歯(C2)の治療法

エナメル質にできた虫歯を放置していると、下層の象牙質にまで到達します。すると、食べ物を噛んだり、飲み物を飲んだりしたときに痛みを感じるようになります。しかし子どもは大人に比べて痛覚が未発達です。そのため、まだ痛みを感じていないケースもあります。

治療法としては、C1と同じように虫歯になった部分を削ってレジンを詰めるか、あるいは歯の型を取って詰め物を入れる方法があります。

神経まで到達している虫歯(C3)の治療法

象牙質まで到達した虫歯をさらに放置していると、内部にある神経まで到達します。すると、飲食をしていない間も鋭い痛みを感じるようになるため、神経を除去する治療を行います。

大人の場合は神経を全て除去する治療法を行うケースが多いです。ただ、子どもの場合は神経の再生能力が高いことから、状況によっては神経の一部を残す生活歯髄切断法という治療が採用されることもあります。

神経の一部を残す理由は、乳歯から永久歯に生え替わる際に起こる歯根の吸収(永久歯の成長に伴って歯根が短くなる現象)のコントロールが難しくなり、乳歯が自然に抜けなかったり、逆に乳歯が通常より早い段階で抜け落ちたりする原因となる場合があるからです。

前者の場合は乳歯を抜く治療の必要性が出てきますし、後者の場合は早い段階で乳歯が抜けてしまうことで両隣の歯が倒れてきてしまい、永久歯が生える場所が塞がれてしまって歯並びが乱れる要因になることもあります。

ただし生活歯髄切断法は全てのケースに適用される方法ではないため、実際の治療法は医師と相談しながら進めていくことになります。

歯の根しか残っていない虫歯(C4)の治療法

虫歯を長期間にわたって放置すると、最終的に歯の根っこしか残らない状態になります。ここまで進行した虫歯は、永久歯なら基本的に抜歯となりますが、乳歯の場合、早い段階で抜歯すると歯並びが乱れる原因となるため、可能な限り治療で根を残す方法を選択するのが一般的です。

虫歯が進行し過ぎて根を残すことも難しい場合は、抜歯後、保隙装置と呼ばれる装置を使い、永久歯が生えてくるスペースを確保する処置を行います。

乳歯が虫歯になったら早めに適切な治療を受けよう

乳歯は永久歯に比べてエナメル質や象牙質が薄いことから、虫歯の進行が早い傾向にあります。また虫歯になっても色が白っぽいまま変わらないこと。痛覚が未発達で痛みを感じにくいことから、乳歯の虫歯は永久歯よりも発見が遅れやすいといわれています。

気付いたときには虫歯がかなり進行していたというケースも多いので、日常で子どもの歯のチェックを行うとともに、定期的に歯科医院で検診を受けて虫歯ができていないかどうか確認してもらうことをおすすめします。

乳歯が虫歯になる原因は、磨き残しやだらだら食べ、家族からの感染など複数あるため、一度生活習慣や食習慣を見直し、虫歯のリスクを低減する工夫を取り入れましょ

診療内容

Contact

歯に関することでお悩みの方は
お気軽にご相談ください。

お電話でのご予約・お問い合わせ
052-433-6880

平日9:00-13:00 / 15:00-19:00

土日(祝休) 9:00-13:30 / 15:00-17:00

24時間Web予約
お気軽にご相談ください
診療科目 一般歯科小児歯科口腔外科歯科健診・インプラント・審美歯科訪問診療
所在地 〒450-0002
愛知県名古屋市中村区名駅4丁目11-1
コレクトマーク名駅4丁目 5階
  • 名古屋駅から
    徒歩5分
  • 平日19時まで
    土日も診療
  • 各種保険適応
診療時間
9:00 -13:00 13:30まで
15:00 -19:00 17:00まで
電話をかける 24時間Web予約 アクセス