歯科で行われる全身麻酔とは? メリットやデメリットを解説
歯科で抜歯手術などが行われる際、手術内容や患者さんの状態によっては全身麻酔を実施することがあります。全身麻酔を施すことで、患者さんは痛みや刺激などを感じずに手術を受けることが可能です。しかし全身麻酔には痛みを感じないといったメリットだけではなく、費用が高くなるなどのデメリットもあります。
本記事では全身麻酔とはどのような麻酔か解説し、局所麻酔の違いやメリット、デメリットなどもご紹介します。
歯科での全身麻酔は痛みを感じずに手術を終えるための手法
全身麻酔は一般的に大規模な手術や上半身に施す手術に用いられる麻酔方法ですが、歯科でも採用されることがあります。
全身麻酔を受けた患者さんは無意識になります。人間は寝ている間も無意識ですが、痛みや刺激を受けた場合、眠り続けられずに起き上がってしまうことが一般的です。
全身麻酔は無意識になるだけでなく、体が動かず記憶が残らない状態になります。このような状態になるのは、点滴によって静脈に投与された麻酔薬が、中枢神経系である脳と脊髄に作用するためです。また全身麻酔をすることによって、手術中であっても痛みを感じることはありません。
なお全身麻酔中には呼吸が弱くなるため、気管へチューブを挿入し、人工呼吸を行います。他にも胃の内容物を出すチューブや、尿を出せるようにするチューブが必要になる場合もあります。
日本麻酔科学会は、全身麻酔を行うときの指針として「専門の麻酔医が絶えず現場を看視すること」を定めています。患者さんの血液や心電図、酸素飽和度などをモニタリングして、変化が起きた際にすぐに対応できるように備えています(※)。
※参考:日本麻酔科学会.「安全な麻酔のためのモニター指針」.https://anesth.or.jp/files/pdf/monitor3_20190509.pdf ,(参照2024-03-27).
全身麻酔と局所麻酔の違い
全身麻酔とは異なる麻酔法が局所麻酔です。意識や痛みを感じない全身麻酔に対して、局所麻酔は手術する箇所のみの痛みを感じなくなる麻酔です。意識は残っているため、周囲の音や様子を認識できます。
局所麻酔は全身への影響が少ないため、全身麻酔と異なり呼吸が保たれます。日帰り手術のように、比較的小規模の手術に用いられるのが一般的です。ただし局所麻酔で対応できる小規模な手術であっても、患者さんが局所麻酔アレルギーを持っている場合、全身麻酔が採用されるケースがあります。
局所麻酔は全身麻酔と異なり、手術中に患者さんが体を動かすことも可能です。そのため子どもなどじっとしていられない患者さんには適していません。
全身麻酔のメリット
全身麻酔のメリットは、患者さんが精神的に安定した状態で手術を受けられるという点です。全身麻酔であれば、術中の記憶が残ることは原則ありません。そのため麻酔から覚めた後に、治療時の痛みや不快な記憶が蘇ることはないでしょう。
歯科における全身麻酔であれば、複数の歯の処置など治療時間が長くなる施術であっても、患者さんの精神的な負担を減らすことが可能です。
全身麻酔のデメリット
全身麻酔を行う際は、事前に全身の状態を確認するための検査を行います。さらには全身麻酔中の嘔吐・窒息を防ぐため、治療前には一定時間の絶飲食が必要です。喫煙者の場合は肺の合併症が術中・術後に発生する可能性があるため、手術前には禁煙を心掛けましょう。
治療前だけでなく、治療後にも約1時間の安静期間が求められます。手術後に麻酔から覚めたとしても、すぐに帰宅できるわけではありません。
全身麻酔は軽度の合併症として吐き気や嘔吐、頭痛などが現れる可能性があります。また、人工呼吸による喉の渇きや声のかすれ、口唇の損傷などが起こるリスクも考慮しておきましょう。
全身麻酔のメリット・デメリットを把握して手術に臨もう
全身麻酔をすると意識がなくなるため、痛みや刺激を感じなくなります。無意識のもとで手術を終えられるため、患者さんは麻酔から覚めても手術中の不快な記憶や痛みを思い出すことはないでしょう。一方で、治療前後の処置に時間がかかる、合併症が生じる場合があるなどのデメリットがあります。
歯科においても、症状や患者さんの状態によっては全身麻酔が採用されることがあります。全身麻酔のメリットとデメリットを理解した上で、不安を軽減した状態で手術に臨みましょう。